朝鮮資料を代表する『捷解新語』は何度かの改訂を重ね, 當時の生きた言語を反映する文獻として資料的價値が高い. 『捷解新語』は朝鮮語を母語とする人人の手に成った.故に, 朝鮮語出自の語, または朝鮮語の干涉を受けたと思われる誤謬例が見られる. それらは版を重ねるに從い, 訂正の道をたどった. 第二章ではそのような語彙·語法について明らかにした. また『捷解新語』三本成立の時期は日本語にとっても大きな變容を余儀なくされた時期である. 新舊の交替があれば, 具體的にどのような姿で『捷解新語』三本にあらわれているかを見たのが第三章の「おりない」「がな」「かし」周邊のことどもである. また改修本に見える「ぎょいゑ」「くでん」「つこらぬ」は中央文獻にあらわれにくい特異な語であり俗語と見られる. 『捷解新語』がも獨自の資料性に, どのように接近していくのかを試圖したのが本稿である.